2021.03.31
これからのホルモンの話をしよう
『ホルモン』と言えば、何を思い出しますか?
なんとなく体に良いもの、あるいは美味しいもののイメージがあるかもしれません。
実際に体内で合成されるホルモンとは微量ではありますが、血糖値や水分量を調節し生命維持に大切であったり、成長や妊娠などにも大きく関与する物質です。
コルチゾル、インスリン、プロラクチン、サイロキシン、グルカゴン、オキシトシン、プロゲステロン、アドレナリン、アルドステロン、バゾプレッシン、セクレチン、テストステロン…etc
ざっと挙げただけでも、かなりの種類があります。
これらのホルモンは多すぎても少なすぎてもダメで、ちょうど良いタイミングで、ちょうど良い量を、ちょうど良い期間分泌されることが重要です。
話は少し逸れますがこのことが理解されると、よく聞く「ホルモンバランスが乱れる」と言う表現が、どのホルモンがどのようにアンバランスになっているか不明な場合が多いように感じます。
さてその「ホルモンバランスの乱れ」ですが、乱れやすい代表的なホルモンとして女性ホルモンがあります。
ここから少し複雑なお話になりますが、お付き合いください。
ここでの女性ホルモンですが、大分おおざっぱに言うと脳の奥にある下垂体から分泌されるホルモンと、卵巣から分泌されるホルモンに分けられます。
更にこの下垂体から分泌されるホルモンは卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)に、卵巣からのホルモンは卵胞ホルモン(エストロジェン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)に分けられます。
これらのホルモンは第2次成長期に最大になり、だんだんと低下して閉経を迎える頃にはかなり少なくなるのが一般的です。
・卵胞刺激ホルモン:卵巣にある卵胞(卵子を含む)の成長を促す。
・黄体形成ホルモン:排卵(卵胞から卵子が飛び出す)を促す。
・卵胞ホルモン(エストロジェン):受精・着床しやすい環境を整える。一般的に女性ホルモンと呼ばれています。
・黄体ホルモン(プロゲステロン):着床した受精卵を温め妊娠を維持させる。
このホルモンたちはお互いに分泌を調節しあい、例えば卵胞刺激ホルモンが増えると卵胞ホルモンの分泌も増え、その量が一定の値になると今度は卵胞刺激ホルモンの分泌を抑えるようになります。
このようなシステムをフィードバック機構と呼びます。
実は「ホルモンバランスの乱れ」とは、具体的にはこのフィードバック機構によって起こっているのです。
年齢を重ねていくと卵巣機能が低下してきます。
当然そこで産生される卵胞ホルモンや黄体ホルモンの分泌も悪くなります。
それらのホルモンの量が足りないので、更に分泌を促すべく卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンの分泌量が増えます。
しかし、卵巣にはその刺激に応えることが出来ないため、卵巣からのホルモン分泌はあまり増えません。
そうするとまた下垂体から卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンの分泌が更に増えて・・・。
と言う状態が続くことで、下垂体からのホルモンが多くなり卵巣からのホルモンが減るというアンバランスが「ホルモンバランスの乱れ」となるのです。
この状態が良く見られるのが、いわゆる更年期です。
上記に挙げたホルモンは卵巣や子宮以外にも、関節の靱帯や筋肉、脂肪組織、色々な所の血管などにも作用するので、更年期では首や肩や腰の痛みに代表される関節痛、末梢の循環不全からの冷え、体型や体質が変化することもあります。これらが日常生活に障害を及ぼすと更年期障害と呼ばれます。
これらの症状を改善するためには、病院でのホルモン補充療法や漢方薬などが奏功しますが、鍼灸治療でも安定することがあります。
また、前回ご紹介した「自律神経の乱れ」もホルモン分泌に影響しますし、その逆もしかりです。
自分自身の身体なのに、自分自身でコントロールすることが難しいときには、鍼灸でお手伝いできることもありますので、お気軽にご相談ください。